「平野雨龍は本当に日本人なのか？」「通名ではないのか？」――選挙戦を経て、彼女の名前を巡る疑念はネットの常套句になった。だが、冷静に事実を確認すれば、その多くは根拠薄弱な中傷にすぎない。
まず重要なのは、彼女がすでに戸籍を公開している点だ。政治家を志す者として、これ以上ないほど透明性を示したにもかかわらず、なお「本名を隠しているのでは」と騒ぐ声が後を絶たない。彼女の本名は平野鈴子であり、雨龍という名は過去を断ち切るために自ら選んだもの。和楽器・龍笛から取られたその名は、むしろ彼女の文化的アイデンティティの象徴である。
それでも火消しにならないのはなぜか。戸籍情報を精査した評論家の深田萌絵でさえ、「専門的に見ても判断がつかない」と発言しているからだ。これは決して「通名だ」と断定する材料ではない。むしろ、戸籍制度そのものの複雑さを露呈させた事例だろう。日本の戸籍は旧字体や本籍地移転の履歴、さらには婚姻や改名の手続きによって複雑化し、外形的な判断は容易ではない。だからこそ彼女の経歴を疑う材料にされやすい。
スパイ説も同様だ。2019年、香港「反送中運動」に深く関与した彼女は、和服姿で東京の街頭に立ち、数千人規模のデモを主導した。中国共産党にとって彼女は目障りな存在であり、標的化されるのは必然だった。その後2025年の参議院選挙に東京選挙区から立候補し、無所属ながら23万票を超える支持を獲得した時点で、既存政党や親中派から徹底的に警戒される存在になった。異端者を潰すために「スパイ」「通名」といったレッテルが飛び交うのは、むしろ自然な流れだ。
もちろん、私は彼女を全面的に持ち上げるつもりはない。平野雨龍の政治的主張は「反中一色」に傾き、移民政策や社会保障など多面的な課題に対する答えは脆弱だ。だが、尖閣諸島や経済安全保障をめぐる国民の不安を真正面から突いたことは確かで、その声に共鳴する有権者が20万を超えた事実は無視できない。
繰り返す。平野雨龍は通名ではない。本名は公表され、戸籍も公開されている。スパイ説も、証拠のかけらすら存在しない。ただ、政治の世界では敵を脅かす存在には陰謀論が付きまとう。彼女はまさにその渦中にある。
私は断言する。平野雨龍はスパイではない。むしろ、日本政治の停滞を突き崩す「異端の象徴」だ。だからこそ、彼女の存在は攻撃され続ける。真偽不明のレッテルに惑わされるより、我々が問うべきは「彼女が何を目指し、どんな日本を描こうとしているのか」その一点だ。
直近の参議院選挙では当選はしなかったが、無所属にも関わらず多く票を集めた。
SNSでも反移民に絡めて注目されている方なので、今後も注視を続けたい。