緩和された中国人10年ビザの危険性―治安悪化、土地取得、総動員法の足音

岩屋毅 自由民主党

2024年末、岩屋毅外務大臣は北京で、富裕層の中国人向けに「10年間有効の観光数次ビザ」を新設し、これを大幅に緩和すると表明した。だが、この政策は直ちに実現されたわけではないものの、その政治的意図と潜在的リスクには厳しい批判の声が向けられている。  

最大の問題は、治安の悪化だ。審査が緩和されれば、多くの中国人が訪日し、観光客という名の非課税・医療利用の急増が懸念される。SNSでは「日本の医療制度の負担増」「治安悪化を招く可能性」との声が連日飛び交っており、不安感は根強い。 

また、土地取得についても無視できない。中国資本による不動産買収が進めば、国土の実質的支配や土地安全保障の観点から重大な懸念がある。しかし、発表されたビザ緩和は、こうした資本流入の抑制策をほとんど考慮しているとはいえない。

さらに、総動員法をにらんだ安全保障上のリスクもぬぐえない。中国で制定された「総動員法」は、国家が有事の際に国外の資産や人員を動員可能とする法的根拠を持つ。このビザ緩和が密かにその布石になるのではないかとの観測も、言及されている。

これらの懸念は、自民党内でも共有されており、「議論が不足」「国益軽視」との批判が相次いだ。実際、ビザ緩和は2025年7月時点で未実施にとどまっており、腐心する形で棚上げされている。  

中国との人的交流や経済活性化は理解できるが、政治・治安・土地・安全保障を包括する視点が欠如していることは見過ごせない。言論の自由や経済協力の名の下で、国家の安全と国民の暮らしを軽視した政策には、明確な懸念を共有する必要がある。